【読書感想】世界史を大きく動かした植物

BOOK

人間の意思が作ったと思っている世界の別の側面

ダーウィンの進化論を何となく程度で知っていて「生物自身が生存戦略として進化をしてきた」と爆然と思って生きてきました。でも「よし、これからはエラ呼吸より肺呼吸だよね」と考えたら数世代を経て知らないうちに肺呼吸に進化する、みたいなことはどうしても想像しづらかった。

たぶんこれは進化論の中身をよく知らないからかもしれない。それで、『サピエンス全史』や『銃・病原菌・鉄』を読むと、その進化は生物自身の意図的なものというより、長い時間と可能性の数の掛け算で生まれた結果論の様なものだったのかと考えることができた。

一方で人間社会は人間がコントロールしていて、世界史的な尺度での出来事は人間自身の意思によって推し進められてきたと思っていたので、植物がどのように人間の歴史に関わってきたのか、興味が出て読み始めました。

本音の本音は水戸部功さんデザインの装丁にひっぱられてジャケ買いしただけですが。

受動的でありながら世界史を動かしてきた植物

「世界史を大きく動かす」という観点でいうと、植物の影響は主に2つ。

  1. 食料事情にめちゃくちゃ影響
  2. 人間の「快」にめちゃくちゃ影響

なので、確かに人類に大きく影響してきたのだな、と再認識させられました。

イネやトウモロコシの万能っぷり、米と大豆のパーフェクト・コンビ・フードっぷり、ジャガイモの「人類の救世主」感など、植物のキャラも立っていて面白かった。

人間の「快」への影響でいうと、植物の中にはカフェインを含んでいたり、脳内モルヒネを分泌すさせるものがあったりして、つまり「人間の意思に作用する」植物が結構あることも改めて認識できました。コーラも「コーラ」という植物で中毒性があるらしい。

また、直接成分的な問題でないにしても、イギリスでチャが流行りすぎたせいでアヘン戦争が起こったり、ワタの心地よさに魅了されて大量生産するために多勢の人が奴隷として死んでいくことになったりと、「快」に作用する植物の影響と人間の凶暴さが掛け合わさって多くの悲劇が生まれたりもした。

サピエンス全史でも投げかけられていた問いとして「植物を大量に管理・繁殖させることで人類は進化・繁栄してきた」と見るか「その魅力的な能力で自身を人類に栽培させて上手いこと植物たちが繁栄してきた」と見るか。

そこに意思があったかどうかが人間的には重視される(というか僕が重視してしまう)一方で、その意思に働きかけて静かに世界史を動かしてきた存在として植物の歴史を見れたのは面白かった。静かなので、なかなか気づきづらい。

あとは改めて世界史レベルでみるとイギリスとか「先進できた国」の傍若無人っぷり。これはイギリスがどうこう、ではなくて先に進化さえしていればどの国のどの民族であっても、きっとこういう風に傍若無人に振る舞ったのだろうな。もしくは、このように傍若無人に振る舞えるだけの強烈な欲望を持てた集団だからこそ、早くに進化できたと見るべきか。

ただ、読了後の率直な感想としては「へ〜そうだったんだ」という小さな発見が散見される雑学集的な本だったなぁ、という感じ。特に後半に読み進めるにつれて一気に雑学本になっていったような。

何か新しい視点が得られなかったのは、いまこの本から視点を得る必要性や能力が自分になかったからかな、と考えつつ、とりあえず装丁が好きなので部屋に飾っておきます。

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ここに自分のプロフィールを入れる。ほぼサイトの説明のような感じでも良いかと思っている。フリーランス、デザイン、絵、プログラムなどが主になってくるが、あまりに散漫にならないように気をつけなければならないのも、事実。